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担当者インタビュー(長沼町グリーン・ツーリズム運営協議会)

受け入れ組織プロフィール

★ 受入主体

長沼町グリーンツーリズム推進協議会
会長:駒谷信幸

★ 特徴
稲作・畑作・果樹・酪農・畜産までの多彩で豊かな農業地帯
160軒を超える民宿許可を得た農家民泊の受け入れ体制
役場内の「グリーンツーリズム推進室」が事務局

★ 課題
全体指導者がおらず、プログラムの学習指導過程準拠などに外部の補助が必要
初夏と秋は中高生の修学旅行が毎年入っており新たな受け入れが難しい
 

担当者プロフィール
 長沼担当者

★ 担当者
長沼町産業振興課 長沼町グリーンツーリズム推進室
主事 桃野淑恵 氏

★ プロフィール
長沼生まれ、長沼町育ち。役場に奉職して給食センターや福祉の仕事を歴任後、2010年春より現職。長沼町が誇る魅力的な農家さんたちの思いと、訪れる子どもたちとの密接な関わりが生み出す価値作りに、大きなやりがいを感じている。

 

 担当者インタビュー

「活動のきっかけと立ち上がりの経緯」を教えて下さい。

平成15年に当時のJAながぬま組合長(現長沼町グリーンツーリズム推進協議会会長駒谷氏)が、将来の農業の方向性を考えるためのアンケートを実施したことがきっかけです。農家さんの半数以上が農業体験の受け入れに興味を持っていたことから、長沼町役場とJAながぬまの職員で「長沼町グリーン・ツーリズム研究会」を立ち上げました。
平成16年3月に構造改革特区として簡易宿泊の許可が得やすくなり、また共同調理であれば食品衛生法の許可が不要となりました。8月に当時の板谷町長を会長として、長沼町、JAながぬま、商工会などの9団体で「長沼町グリーンツーリズム推進協議会」を設立しました。
この頃、農家民泊受け入れの先進地、大分県安心院より中山ミヤ子さんたちに3年連続で来町して頂いて勉強会を実施しました。このことで、普段着のまま受け入れていいんだ、ということを農家のお母さんたちにわかってもらえました。
平成17年2月、事業を実践する農家さんにより、料金やメニューを決定する「長沼町グリーン・ツーリズム運営協議会」を設立しました。この年から中高生の修学旅行での農業体験や農家民泊の受け入れを開始しました。
 ◆設立当初会員数 112戸(うち簡易宿泊許可58戸)
 ◆現在会員数   211戸(うち簡易宿泊許可166戸)
          ※町内の全農家は約800戸
平成20年、「子ども農山漁村交流プロジェクト」のモデル地域として認定。民宿許可を得た農家民泊が160軒以上ある受け入れ体制を活かして、中高生の修学旅行の受け入れの合間に同プロジェクトへの取り組みを開始しました。
★ 「立ち上げ後の歩みと現在までの活動状況」を教えて下さい。
平成22年度で農家民泊受け入れ6年目が終了しました。
年間4600人今日の修学旅行生が「ながぬま温泉」に入浴し(町の負担で入浴料100円引き)、300人程度の先生がここに宿泊をしていただきました。民泊で受け入れ農家さんが提供している長沼町名物のジンギスカン(商工会の協力で農家さんは1割引で購入可能)の売り上げも大きく、町にも町内の方々にとって大きな経済効果があります。
平成22年度での小学生の受け入れ実績は、5月に神戸大学付属住吉小学校114名と、8月に同志社大学付属小学校88名で、ともに1泊2日の農家民泊で共同調理をしました。体験メニューは、住吉小学校では田植え・トウモロコシやブロッコリーの苗植え・庭木の剪定を、同志社大学付属小学校ではトウモロコシやミニトマトの収穫体験をしてもらいました。
◆平成22年度の実績
宿泊受け入れ 4603名
日帰り受け入れ 1465名
◆現時点での費用
農家門祝宿泊料金(1泊2日)
・修学旅行 8400円(農業体験含む。保険料+190円)
・一般向け 7350円(農業体験なし。保険料+230円、農業体験希望の場合は+1575円)
    昼食代     630円
    ◆運営費
    農家民泊料金総額の5%を運営協議会運営費として徴収。(日帰り農業体験も同様5%)

 「現在の中心的メンバーやコーディネーターのような役割」をしている人はいますか?体制はどうなっていますか?
 

長沼町グリーンツーリズム推進室は役場の産業振興課の一部署となっていて、玉井室長の下に私(桃野主事)と臨時職員2名います。臨時職員のうち1名は農業改良普及員を退職された方で、農家さんをまわって様々な渉外活動や新規会員獲得をして下さっています。長沼の農家さんがたくさんこの事業に協力をして頂いている大きなきっかけになっています。
農家民泊は、役場の私(桃野主事)が受け入れ窓口となって、旅行会社との窓口になり、受け入れ生徒さんの割り振りやアレルギー有無の対応などをしています。かなり大変な作業ですが、受け入れ農家さんたちの意識や気持ちの高さと連携に助けられています。毎年、冬の間に受付分をまとめ、年明けに年間受け入れスケジュールを農家さんに配布しています。
ほかに、JAながぬまにも担当者がついてくれて、旅行会社からの入金管理と受け入れ農家へお金の分配管理をやって頂いているほか、日帰り体験の受付窓口をしています。5~6月の田植えなどに札幌の7校の中学2年生が旅行会社を通して毎年いらしています。1校平均200人程度です。

 この取り組みでの「地域ならではの魅力やセールスポイント」は何だとお考えですか?

町内では稲作、畑作、果樹、酪農・畜産など多彩で豊かな農業が展開されており、その田園風景と体験活動がセールスポイントです。悪天候の場合でも、農業加工センターや「米の館」などに連れていって、農業のことを語るようにしています。
でも一番の魅力は、受け入れ農家さん、特にお母さんたちの熱い思いとその人柄、普段着で生活する姿です。お別れのときに涙を流しながら握手をしている姿を見ていると本当にそう感じます。
北海道での3~4泊の修学旅行でいろいろなプログラムや体験をした中で、「長沼の農家さんの家に泊まったことが一番よかった」と多くの生徒さんに評価を頂いています。就学旅行から帰ってから、後年両親を連れて再訪する方や大学生になってから友人との再訪も多くあります。
風景や体験内容とともに、農家さんの気持ち一番の魅力だと思います。
農家さんは子どもたちが来るのを楽しみにしながら、農業経営を頑張って取り組んでいます。来訪するタイミングに合わせて体験分の植え付けをし、得意料理でもてなし。子どもたちの楽しかった、美味しかった、という言葉に生き甲斐を感じていらっしゃるようです。農家さんの思いや熱意は、子どもが大人になった時に食べるものをちゃんとわかって自分で選択できることを、そして将来どんな職種についても食料の生産現場、農業のことをわかってほしいという思いから来ています。

 これまでの取り組みで「困ったことや課題と感じること」は何ですか?

特に困ったことや大きな課題だと思うことはありません。
農家さんは設備投資なく自然体で始められ(民宿登録費用の半額1万円を補助している)、休みたいときは無理せず休むことができるようにしています。農家さんの設備投資は、農作業着と長靴などの購入費くらいです。
地域の理解や協力体制が築かれていることもあり、例えば、ある農家さんでは急なお葬式が入った時も、近隣4軒で受け入れがある日だったためお葬式を一日ずらした、ということもありました。
大変なことは、農繁期がそれぞれ異なる受け入れ農家への割り当てと、アレルギー(食物アレルギーや動物アレルギー)を持つ子どもが増えていることへの対応です。
あとは、受け入れ農家さんに偏りも出てきているため、受け入れ農家さんの新規開拓が常に必要なことです。農家さんの中には全25回開催のうち24回受け入れたところもありました。
集客に関しては、スタート時に自ら宿泊をされたJTBさんが気に入って下さり1校を連れてきてくれました。当時は先進性からマスコミ取材などがあったおかげで、本体一番大変な集客については有難いことに困りませんでした。

 この取り組みを進めていく上で「大切だと感じること」は何ですか?

目的は「心に通じる交流」だと思います。そのためには町の人々が意識することはもちろんですが、子どもさん、学校さんにもしっかり理解をして頂けるようになることも大切だと思います。
労働の大切さ、食べ物・農家さん・自然への感謝と大切さ、生産者の実態、面識のない人とのコミュニケーション、都市と農村の違い、家庭の温かさ、人情に触れられるのが農家民泊で提供できる価値です。受け入れ農家さんは自宅に泊まりに来る子どもたちのプロフィールを事前に見ていて受け入れ当日を楽しみに待っています。
子どもさんには、農家さんに「またおいで!」といってもらえるように、長沼のこと、農業のことなどを少しでも事前に勉強をして、当日はたくさんお話をして交流を楽しんでほしいです。民泊も共同調理もお客さん気分ではダメ、そこの家の子どもや孫になるつもりで来てほしいです。漠然と来るのではなく目的意識を持って。せっかくの機会なので、学校さんはこのことをきちんと子どもに伝えて頂きたいです。
これまでいらした小学校では、「とうきびにヒゲがある意味」など、いろいろと勉強をしっかりとして来て下さったので、とっても濃くいい時間を過ごすことができました。

 「今後の展開」について教えて下さい。

現在は中高生の修学旅行受け入れがメインですが、小学生の受け入れにも今後は積極的に取り組んでいきたいです。実施を考えている学校さんには、受け入れ農家さんの世代や種類も幅広いので、まずは気軽に相談をしてほしいです。現状では、初夏と秋の修学旅行シーズン以外で1軒あたり2人ずつ程度の農家民泊が一番安心して受け入れがしやすいです。修学旅行は半分程度の学校がリピートしてくださり、5月分は2年後の予約も既に満杯になっているので、夏や冬など修学旅行オフシーズンに受け入れをしたいです。(修学旅行に関しては予約状況の情報発信はホームページのみで、早いもの順に受け入れています。)農家民泊の受け入れはいつでも可能ですが、教育課程に準拠したプログラムの企画・実施などは外部からのコーディネートや協力を得ながら相談のうえ展開してくことになります。  

2011年1月12日

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